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<< ●絵空事の恋.....。紅葉が人生を示唆する。恋には無縁の実直な男。その男の恋。それはどの恋よりも美しい。歌人、家隆。無謀な戦いに破れ、隠岐に流された後鳥羽帝にも忠誠をつくした男。 | main | ●西行法師は「桜」だけ詠う歌人ではなかった。紅葉を越える、冬凍(ざ)れの絵画美。桜さえ超える...天性の雅び。気魄。冷え侘びた夢。うつつの影。陶然とする世界がこの詠にある。 >>
●ここにもいた、王朝のかなた、紅葉の残照から浮かびあがる人物がひとり。紅葉のあてやかさ、美しさを背景に、名僧道元の登場。思いがけない人の子として。黄昏のたそがれから生まれる無常を禅問答にたくした「正法眼蔵」の作者として...。
某月某日(どうか<「紅葉」こそ樹木の華、人生の雅び>の最初からお読み下さいませ)
紅葉13
 俊成卿女のことを前々々回に述べたが、彼女を夫源通具(みなもとのみちとも)から離縁させたのは舅(しゅうと)通親(みちちか)。
 「建久の政変」を企んだ張本人。
 それまでの宮中人脈、すなわち藤原良経(よしつね)、その父九条兼実(くじょうかねざね、歴史書「玉葉」作者)、彼らの親族大僧正慈円などを失脚させた。
 兼実の娘の任子(にんし)は後鳥羽帝の中宮であったが、宮廷から追放された。
 源頼朝の長女大姫を、あらたに、17歳の後鳥羽の後宮に入れようとしたのだ。
 悪人ではなかったかもしれないが、政治的野心のつよい、独裁独走の奸計の策士=奸雄の趣きがありすぎる。
 個人的には、好きになれたことのない人物。
 わたしは良経に傾倒しているために、また夭折したその良経を追うようにしてみまかった兼実にも畏愛をいだいている。
 通親はいわば「敵役」。
 だが、運命はふしぎなことをする。
 彼には歴史に名をのこす、あと2名の息子がいた。
 通具と母を同じくし、歌人としての評価も高い通光(みちみつ)。
 腹違いのもうひとりの弟...道元。
道元
 そう、あの禅問答、禅語録の書として聞こえたかい「正法眼蔵(しょうほうげんぞう)」を書いた、曹洞宗の開祖、道元禅師である。
 座禅をひろめ、日本に喫茶の風習をはじめてもちこんだ僧としても著名。
 .................
 その名僧が、あの奸計の士、通親の実子...とは。
 .................
 これは、これは...。
 紅葉のあてやかさに目を細めながら、人生の流れのふしぎな縁を感じるのも味わい深い。

*掲載写真は上、道元が宇治に創建した「興聖寺」琴坂。下、道元禅師。
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